Passive and Low Energy Architecture
PLEA は、Passive and Low Energy Architecture の頭文字をとった造語です。パッシブデザインでエネルギー消費の少ない、環境に優しい建築のことを指します。PLEA Design(プレアデザイン) は、そのような建築デザインのことを意味しています。パッシブでエネルギー消費の少ない建築をつくることは、かつては、当たり前のことでした。
建築は常に周辺の環境の変化に応答しています。パッシブ建築は、その周辺の変化を都合のよいものは受け入れ、都合の悪いものは退けることで室内気候を受動的に調整します。冬には太陽を受け入れ、夏には日射遮蔽をして熱の侵入を避けて放熱量を最大にします。
冬の日中、太陽熱取得で活躍する南側の大きな開口部は、そのままにしておくと夜間には、最大の放熱部位になってしまいます。パッシブデザインでは、昼と夜、夏と冬とで建物のモード変換が必要になります。パッシブ建築での快適な住まい方は、アクティブな住まい手の活躍によって維持されます。
DESIGN WITH CLIMATE
ビクトル。オルゲイの1963年の著書、Design With Climate は、パッシブデザインの記念碑的な名著です。パッシブザインで大切なことは、全てこの本に紹介されています。出版の背景に重大な被害をもたらした当時のエネルギー危機があります。多くの研究者・エンジニア・建築家たちは建築設計と建築の再構成のために繊細な努力を重ねていましたが、それぞれが別の方法を提案していました。そのような中オルゲイは、創造的な建築デザインのアプローチと、分析的科学的アプローチを統合して建築を作り上げる「統一的なコンセプト」の構築を目指していました。
ここに紹介する、ペーパーバックの Design With Climate は、2015年の復刻版です。ちょうどその頃、日本でも東日本大震災の後の建築のあり方が模索されていました。さまざまな議論は、再生可能エネルギーの利用、高効率機器の使用、パッシブデザインの3点の重要性に整理されます。
震災復興の過程で「いまこそパッシブデザイン」という機運が高まる中、新建新聞社の企画で、2014年4月から2015年3月まで12回に分けて、全3章12部で構成されるこの著作の斜め読みを連載する機会を得ました。オルゲイは1963年の初版本の前書きに以下の言葉を記しています。
建築家にとってこの本は、アイデアを使おうと思っても説明があまりにも細かすぎてすぐには役に立たないと言われるかもしれません。また、環境工学の研究者には、彼らの専門分野がいいかげんに扱われていると言われても当然です。しかし、この考察は、創造的な建築デザインのアプローチと、分析的科学的アプローチという異なる分野に橋渡しをして「統合的なコンセプト」の構築を目指しています。それがこれからの建築に向けた私の希望です。
意訳 武山倫 新建ハウジングプラス1 2014/04 P.14
建築的手法による環境調整
オルゲイは、機械力による環境調整の前に、建築的手法によって負荷を少なくすることの必要性を説いています。暖房期間の日射取得、冷房期間の日射遮蔽などは「建築的手法」による環境調整です。しかしこの環境調整にもモード転換が必要です。南側の大きな開口部は最大の日射取得開口部であると同時に最大の熱の流出部位でもあります。
生気候図
Design With Climate の中でも、この図は特に有名です。「オルゲイの生気候図」と呼ばれています。オルゲイは、温度を縦軸、湿度を横軸にしてそのマトリックスに、人の快適範囲を示しました。ただしこの快適範囲は、暖房期間には輻射熱の影響を受け、冷房期間には通風の影響を受けてその範囲が広がることを示しています。
パッシブデザインでは、外の環境から都合のよいものは受け入れ、都合の悪いものは拒絶して受動的な快適環境を維持します。夏の日射遮蔽、通風促進、冬の日射取得、防風などは、その土地の気象データを分析することからデザインが始まります。