SDGsは2015年9月の国連サミットで採択されたもので、国連加盟193か国が2016年から2030年の15年間で達成するために掲げた目標です。SDGsとは「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称です。SDGsには17目標それぞれに平均10個ずつくらい同じようなターゲットが存在し、合計で169個あるので169のターゲットと言われています。
1~6の目標を見ると、貧困や飢餓、健康や教育、さらには安全な水など開発途上国に対する支援に見えると思いますが。日本の子どもの6人から7人に1人は貧困だと言われています。給食費の払えない家庭が沢山あります。日本を先進国だと思っている人が沢山いますが、ジェンダー平等に関しては、日本は後進国です。日本の意識レベルは、2020年12月に世界経済フォーラムで発表された数字によると153カ国のうち121位と、とても低い数字になっています。
7~12の目標を見ると、建築が関わる分野が多いことに気が付きます。衣食住と言いますが、建築は生活の根幹を支えるものです。
気候変動、海と陸の問題、開発途上国や先進国だけの話ではなく、「地球」を考える包括的な視点が見えてきます。SDGsが世界でこれだけの広がりを見せているのは、開発途上国だけではなく先進国も、働きがいや経済成長までも踏まえたものだからでしょう。
SDGs の17の目標と、169のターゲットは、ばらばらにあるのではなく、互いに関連して連鎖するモノです。そのように見てみると、宮城県気仙沼市唐桑町の「牡蠣の森を慕う会」の活動が浮かびます。
気仙沼湾は三陸リアス式海岸の中央に位置する波静かな天恵の良湾で、古くから近海、遠洋漁業の基地として有名です。特にカツオの水揚げは日本一を誇っています。波静かな入り江は養殖漁場としても優れていて、江戸時代からノリ、大正時代からはカキ、近頃はワカメやホタテなどの養殖も盛んでした。ところが、昭和40年~50代にかけて気仙沼湾の環境が悪化してきました。赤潮が発生し湾内はまるで醤油を流したような茶色の海となりました。
牡蠣の漁場は世界中、川が海に注ぐ汽水域に形成されています。川が運ぶ森の養分がカキの餌となる植物プランクトンを育んでいるからです。そこで、川の流域に暮らす人々と、価値観を共有しなければ、きれいな海は帰ってこないことを悟りました。―大川上流の室根山に自然界の母である落葉広葉樹の森を創ろう― そして、集まった仲間で「牡蠣の森を慕う会」が作られました。この運動は、「森は海の恋人運動」と呼ばれ、小・中学校の教科書でも取り上げられ、全国に拡がっています。
https://mori-umi.org/about/history/
従来の学問では、縦割で世界を捉えており、森・川・海は別々の範畴に置かれていましたが、平成16年から京都大学が京都大学フィールド科学教育センターという組織をつくり、森里海連環学という新しい概念の学問を起こしました。森は海の恋人という言葉がそのヒントになったということです。
「森は海の恋人運動」は、気仙沼の健康な、牡蠣の養殖のために、川上の山に植林を続ける運動でした。森里海連環学でつながった川下と川上は、森が水を創り、海がそれを育み、両者がネットワークすることで、山に健康を取り戻して、異常気象や地球温暖化を阻止することに大きくつながります