DESIGN WITH CLIMATE 01/12

PLEA Design

01/12 気候からのアプローチ

本稿では、オルゲイの「DESIGN WITH CLIMATE」の流れに従って、パッシブデザインについて考えるヒントを話題にしていきたいと思います。今回は第一章第一節から、その土地で建物の快適を得るためには、先ず建物の気候とのバランスをデザインして機械力に頼る冷暖房は最後にほんのわずかにするという極意について。さっそく、第1章 第1節を紐解きます。

PART 1 CLIMATE APPROACH
1.GENERAL INTRODUCTION p1
The Earth and Life / Animal Life and Shelter / Human Life and Shelter / Adoption of Shelter to Climate / Similarities Around the World / Community Layouts and Climate / Regional Character / Climate-Balance  / To find a Method /  Summar

第一部 気候からのアプローチ
第一章 概略紹介 p.1
地球と生命 / 動物の生命とシェルター / 人間の生命とシェルター / 気候に対応したシェルター / 類似しているところ類別 / コミュニティレイアウトと気候 /  地域の個性 / 気候バランス / 方法を検索するには / 要約

「DESIGN WITH CLIMATE」の副題は「建築的地域主義への生物気候学アプローチ」です。建物は地域の気候風土に固有のかたちをとります。

オルゲイは、建築をその土地の気候に対応した生命のシェルターとして捉えることで、そのデザインに現れる特徴をその地域の気候に照らして解説しています。地球上には様々な地域がありますが気候の類似するところも複数存在し、そこに現れる建築の形は、その土地で得られる材料でできるだけシンプルにその土地の気候における快適を模索した結果です。洋の東西を問わず、気候に似たような特徴を持つ地域ではシェルターやレイアウトに類似性が見られることをオルゲイは指摘しています。

Fig.1.1 DESIGN WITH CLIMATE Fig.2

動物の生命とシェルターのところでは、生息地域の気候風土で変わる「鳥の巣」や日射と蟻塚の形状の関係に触れています。

a) 開放型:枝や藁のようなもので断熱性を確保する。

b) ぶら下がり型:植物繊維の引張強度を利用して振り子のように風の影響を避ける。

c) 集合住宅型:泥と藁を利用して直射日光と雨を避ける。入口は個別で個々のユニットは前室と産卵と孵化のための2室で構成される。

d) 特殊型:降雨の影響と直射の影響を最小にすることができる。

e) 地中型:地熱を利用することで安定した温熱環境が得られる。

このように動物のつくるシェルターについても「生物気候学」の視点から説明できることも多く、人間のつくる建築についても、動物としての人間の命のシャルターとして捉えているところが新鮮です。

Fig.1.2 DESIGN WITH CLIMATE Fig.29/30

ここに、パッシブデザインの真髄を説明した有名な図が登場します。建物は完成すればただのハードウエアとして建築家が意図するしないにかかわらず、周辺の微気候に応答します。オルゲイのこの図はとても有名で、パッシブシステムを解説するさまざまな著作に引用されてきました。シェルターの外構も含めて、外皮をデザインすることで、その土地のマイクロクライメイトから利用可能なものを利用し、拒絶すべきものを拒絶する仕掛けを持つことがパッシブデザインです。

オルゲイはキャプションに、(microclimatology)その応答を少しでも快適範囲に近づけるために建物の気候とのバランスをデザインします。 (and climate balance of the structure) そして最後に少しだけ (to mechanical heating and cooling)機械力にたよって快適範囲を得る…と解説しています。

パッシブシステムを説明する多くの文献に登場し、またプレゼンなどでもよく出会うこの図の原図が 「DESIGN WITH CLIMATE」の p.11 に登場します。オルゲーの論文では温度は華氏で表示されています。華氏70度を中心に気温冬に向かって徐々に下がり、快適範囲からずれて寒くなります。春に向かって気温は再び上昇し、夏になると快適範囲から大きく上にずれて暑く感じる一年間の外気温の変化に対して、室内を快適にするために、機械力を駆使した暖冷房装置(エアコン)を使うのではなく、まず、建築的な工夫によって暑さ寒さを和らげ、可能な限り「快適範囲」に近づけて、機械的手法に依存するのは最小限にするという考え方です。摂氏の換算式=(5÷9)×(華氏-32) 華氏70度は摂氏21℃に相当します。

また、上の図は地球規模で見たときの「気候影響の水平の相関性」を示しています。緯度の同じ地域は、太陽の運行に対して類似しますが、海と陸の関係や山などの影響で多様なマイクロクライメイトの変化を個性としています。地球上に同じところはふたつとありませんが、「生物気候学」の視点から共通する手法を読み取ることができます。

DESIGN WITH CLIMATE 01/12「気候からのアプローチ」以上

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