04/12 気候の構成要素
第四章では「気候の構成要素」を分析して、天候の要因を説明しています。第四章は次の文章ではじまります。
FACTORS IN WEATHER
WEATHER is an ensemble of all meteorological variables. At any given moment the elements
appear in combination, and it is difficult to determine their relative importance in the thermal interplay. The Architectural solutions to individual climatic problem should of course be similarly blended in a climate balanced structure. To achieve this, a method for calculating the importance and relationships of climatic elements should be the needs of building practice.
天候の要因
天候はすべての気象変数の全体として現れます。所定の瞬間では、要素が一緒に現われます。また、熱の相互作用の中ではどの要素が相対的に重要なのかそれを決定するのは難しい。個々の気候の問題を建築的に解決しようとするためには、気候をバランスのとれた構造で同様に混合されるべきです。重要性を計算する方法および気候要素の関係を達成するためには建築的な試みが不可欠です。
オルゲイは第4章で、多くの変数が複雑に絡み、結果として現れる複雑な「天候」について個々の要素の解説をしています。太陽光は直達日射だけではなく、天球に拡散する散乱光もパッシブソーラーシステムでは利用できる自然エネルギーです。ここで地球のエネルギーの源、「太陽放射エネルギー」について考えます。
太陽光がどのように形を変えて地球に影響を及ぼしているか、そしてそれが天候や気候にどのように作用するか解説しています。魅力的な挿絵があります。似たような絵を太陽熱利用の解説でよく見ます。太陽の放射エネルギーは地球の大気圏に入ると図のようにいろいろな形で地上に到達します。大気中をそのまま投下してくる「直達日射」、大気中や雲で拡散して地上に到達する「散乱日射」とも利用可能な「太陽エネルギー」です。地上に到達する太陽放射エネルギーは、そのほかに、大気や雲に一旦吸収されてから地上に向けて再放射される大気放射があります。長波長の熱赤外線による授受は、地球の熱収支バランスの中ではとても重要な役割を果たしていると言われています。
パッシブクーリングの手法のひとつである「夜間放射利用」はこの原理を使っています。
大気放射冷却は、冷やすべき面の表面温度が高く、大気放射量が少ないほど促進されます。砂漠地方のように乾燥して澄んだ空の下では外気温の降下とともに、冷却面は凍結するほど冷却されます。日本でも砂漠ほどではありませんがこの大気放射冷却の効果をパッシブクーリングの手法として活かすことができます。特に冷やしたい部位の表面温度が外気温よりも高いようなときには、外気との対流による放熱の効果との相乗効果が期待できます。太陽から地上に到達した日射の一部は反射しますが残りは吸収されます。吸収された熱エネルギーは地表面の温度を上昇させて、大気との間の対流・再放射・蒸発による潜熱として放出されます。オルゲイは地表面を覆うさまざまな材料から散乱して拡散する日射の割合を表にしています。
表面の材質 | 散乱拡散の割合 |
乾燥した裸地 | 10-25% |
濡れた裸地 | 8-9% |
乾燥した砂 | 18-30% |
濡れた砂 | 9-18% |
乾燥した黒体 | 14% |
濡れた黒体 | 3-15% |
緑葉 | 25-32% |
深い森林 | 5% |
砂漠 | 24-28% |
平坦な地面 | 42% |
レンガ | 23-48% |
アスファルト | 15% |
都市部 | 10% |
オルゲイは、建物の周囲の地面がアスファルトやコンクリートの場合そこからの照り返しについても実測データを用いて環境温度が高くなっていることを指摘しています。
オルゲイは当時オハイオのガラスメーカーが発表していた「Sun Angle calculator」の出力を紹介しています。
Fig4.2 は「Sun Angle calculator」によって出力された北緯52度と24度の半球画像の紹介です。20分毎に目盛が示され、日の出から日没まで任意の日時の太陽方位角と高度角をチャートから読み取ることができます。任意の設計地点において太陽の恩恵を十分に得るためには任意の日時の太陽の位置を知ることが必要です。これによって受熱できる日射量を計算し、計画的には建物の配置、外部空間の設計、平面計画、日射遮蔽のための日除け装置の設計を行います。太陽の運行をアナログ的に正確に把握する試みは多くの先人たちによって試みられてきました。
オルゲイは4章の後半で「風」を扱っています。
Fig.4.3 がオルゲイが示したかったデザインツールです。上部は利用するのではなく防御すべき風向とその方向からの風の発生頻度をビジュアルにベクトルの太さで感覚的に把握できるように配慮されています。下の図に示された風が痛風促進を図ると体感の快適範囲を広げることに使うことができる利用できる風です。風も太陽熱が絡む気象現象のひとつです。ここでオルゲイが苦労しているのは、任意の計画地ではなく気象観測ポイントでの計測データをパッシブデザインの設計資料にするための工夫です。
高度が高いと風速も早く、地上30mの計測データは地面近くでの体感風速と異なりますし、10mに満たない建物を計画するときには約にたちそうにもありません。オルゲイは観測地の風速データを高度によって読み替える方法を採用しました。
Fig.4.3 はニューヨークの地上50フィート(15.24m)の風向と風速をチャートにしたものです。チャートは横軸が日(左から1月→12月)縦軸が時間(24時間(上が0時下が24時)、つまり24時間365日のマトリックスの中に発生頻度が高い風向をベクトルで表示しています。
Fig.4.4 は、さきほどのニューヨークの地上50フィート(15.24m)の風向と風速をチャートを地上6フィート(1.82m)に読みかえたものです。びおソーラーでも気象データを処理して、シミュレーションに利用しています。風速については、AMeDAS観測ポイントの計測地点のデータから、地上6m付近の風速に読みかえて分析しています。
DESIGN WITH CLIMATE 04/12 「気候の構成要素」以上