DESIGN WITH CLIMATE 12/12

PLEA Design

12/12 4つのケーススタディ

fig.12.1 計画敷地形状
Fig.12.2 Organization scheme

気候と建築の関係を示す
アンビルドプロジェクトはコンセプトを明解に示します。オルゲイは「地形」(地勢)を共通条件としながら4都市の気候要素の分析結果から、中産階級1200世帯(平均3.5人家族)4800人の居住コミュニティーとそのセンターコア(商業・行政・教育・医療などの中心施設)の最適解をスタディしています。Fig.12.1 はオルゲイが示した今回のスタディする地形です。敷地面積は4平方マイル(約10平方キロメートル)。川を挟んで南側に平地が広がり、北側に穏やかな南東向きの斜面が続いています。ここに4都市の気象データを重ねます。何もないところに突然「まち」をつくるという発想は、いかにもアメリカ的ですが、オルゲイは分析的アプローチでバイオクライマティックデザインを展開しています。

街の構成は次のように想定されました。
A.戸建て住宅 60% 870世帯
A1)低層集合住宅 20% 280世帯
A2)高層マンション 20% 280世帯
  各住戸単位には遊び場を備えた中央保育園があり、図書館分室、ドラッグストア及び礼拝堂が隣接近隣センターは以下の機能で構成される。
C.商業施設(ショッピングセンター・スーパーマーケット・個人商店・事務所)
D.行政地区(役所・郵便局など)
E.文教地区(幼稚園・小学校・劇場・集会場・レストランなど)
F.運動公園(陸上競技場・サッカーコート・テニスコート・ピクニックができる広い緑地など)

Fig.12.31 COLD

Fig.12.33 は「寒冷地」のスタディです。オルゲイは寒冷地に必要な冬季の日射取得と、その時期に冷たい季節風を避けることから、敷地を求めました。日射、防御すべき風などを分析してバイオクライマティックデザイン上の優先順位を決めて、コミュニティの敷地を定め、1200戸の住宅を配置しています。Fig.12.31の上図は、一年間の太陽チャート(時間毎太陽方位角高度角)に利用可能な卓越風の方位と「 overheated period」(過剰集熱期間)を落とし込んで、日射と風の防御・利用を考慮した建物の理想的な方位を「 orientation axis」として示し決定するオルゲイの「sun-air」手法を示しています。

Fig.12.31の下図は、日射と風について何を優先するかについての分析です。一年間(24時間365日)を分母として、日射や風が求められる割合を示しています。日射の必要な時期と風を防御すべき時期は、いずれも暖房必要時の同じタイミングのため同じ割合になっています。風を防御すべき期間が76%、風を積極的に取り込むべき時期が4% 、風の配慮が必要ない時期が15%。一方、日射が必要な時期は76%、影が必要な時期が24%の比率になっていることがわかります。

Fig.12.32 COLD 土地利用図

このようにして一年間で日射と風が求められる割合を把握することで、建物として優先すべき気候要素を分析して、それらが得られる方位を決定しています。こうしてFig.12.31 の二つの図を兼ね合わせることで、その地域特有の日射と風の防御・利用を考慮した建物の理想的な方位を「orientation axis」(上図内太線)で示すことができます。Fig.12.32 の寒冷地では理想的な方位を南から東方向に12度(S12E)と導き出しているのが読み取れます。

Fig.12.33

Fg.12.33 は「寒冷地」コミュニティーの模型写真です。住戸は、南東を向いた斜面の中腹に配置し、ある程度住戸を集めて風を遮りながら、各戸は日射取得の妨げにならない感覚を確保しています。各住戸は日射取得に理想的な真南から10度程東配置され、開口はペアガラス窓を南面と東面に大きく、それ以外は小さくとっています。また、住戸群の東西面に防風林を設け、これによって冬の季節風から守られ熱損失を避けることができます。

オルゲイは続けて、ニューヨークの気候で代表する「温暖地」、フェニックスで代表する「熱帯乾燥地」、マイアミで代表する「熱帯蒸暑地」の三つの地域のスタディを示しました。共通の地形に、気候特性によってどこを敷地に選定するか、パッシブヒーティングの必要な地域にはその地域の気候に応じて効率の良い太陽熱取得と最小限の熱損失を、パッシブクーリングを必要とする地域には、オ-バーヒート時の最小限の日射取得と日射遮蔽、最大限の季節風の利用で快適範囲を広げることを目的として、配置計画を提案しています。

Fig.12.41 TEMPRATE
Fig12.42 HOT ARID
Fig.12.43 HOT HUMID
Fig.12.51 TEMRATE
Fig.12.52 HOT ARID
Fig.12.53 HOT HUMID

Fig.12.41 は「温暖地域」の「sun-air」手法による分析です。パッシブに快適範囲を広げるために、通風利用がとても有効である温暖地では、日の当たる傾斜面に発生する上昇気流によって川沿いに発生する気流を各住戸が享受できるよう十分な隣棟間隔を確保して各住戸を配置しています。住戸の主要開口部の方位は、寒冷地よりもさらに東寄りで、東西に長い形状になっています。建物周囲を芝生で囲み、日射熱の吸収や室外空間での活動も促しています。

Fig.12.6  温暖地模型

Fig.12.42 は 「sun-air」手法による「熱帯乾燥地域」の分析です。パッシブクーリングのために蒸散が有効な「熱帯乾燥地域」では、住戸は水辺の蒸散や夜間の放射冷却を有効利用でいるように、斜面ではなく川沿いの平地に配置しています。また蓄冷効果を高めるため住戸を連続させて、どっしりと重く、冷気を溜められるようにパティオを囲うように複雑な形にデザインされています。また高層棟は風を享受できるようタワー状に計画されています。

Fig.12.7 熱帯乾燥地域模型

Fig.12.43 は 「sun-air」手法による「熱帯蒸暑地域」の分析です。日射遮蔽とパッシブクーリングのために通風促進が望まれる「熱帯蒸暑地域」では、湿気の多い川沿いは避け、標高の高い場所での風を最大限利用できるように丘陵地のみを使って街を構成しています。風が縦横に通り抜けられるように住戸間の距離を十分とって建物は広く拡散して配置されています。植栽も風をさまたげないよう樹高を高く、低い草木は建物に近づけないようにしています。

Fig.12.8 熱帯蒸暑地域模型

「DESIGN WITH CLIMATE」の副題は「BIOCLIMATIC APPROACH TO ARCHITECTURAL REGIONALISM 」(建築的地域主義への生物気候学アプローチ)です。パッシブ手法は、地域の気象要素をはじめとして建築の構成要素の分析を抜きには語れない「分析的アプローチ」を必要とするものです。オルゲイは、日射遮蔽のための庇やルーバーの評価のために、天空遮蔽率を視覚的に確認する「GROBESCOPE」を発案し、巻末付録で「Thermoheliodon」として紹介しています。

Fig.12.91 Thermoheliodon drawing
Fig.12.92 Thermoheliodon sketch
Fig.12.93 Thermoheliodon

「Thermoheliodon」は、特定の土地にある建築が実現した時に、太陽の運行によって時々刻々と変わる日影を検証するシミュレータです。計画地の緯度をセットして、検証したい特定の「月日」を選び、計画した方位に建築模型をセットすることによって、特定の月日の一日の日影をシミュレートします。学生の頃、芸大の建築科の図書室に同じような機械がありました。めったに使われることのないこの機会は、建築科の図書室の前室に邪魔くさく放置されていました。今は SketchUpでも日影のシミュレーションが簡単にできます。夏至の太陽ばかりが夏の日射遮蔽の毛のツポイントではありません。最も熱くなる時期の日射遮蔽の検討が大切です。

DESIGN WITH CLIMATE 12/12 「4つのケーススタディ」 以上

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