DESIGN WITH CLIMATE 03/12

PLEA Design

03/12 土地が持つ自然エネルギーのポテンシャル

オルゲイは温度と湿度の関係が快適範囲から外れる範囲について、温度の高い範囲では通風促進が有効なこと、また温度の低い範囲については、ダイレクトゲインなどによる日射取得による蓄熱体からの放射が有効であることを「生気候図」に示しました。テーマにしている「パッシブシステム」は日射・気温・通風・地熱といった自然環境が持つエネルギーをできる限り利用し、住宅に取り込もうとする設計手法です。

パッシブ的な建築手法については、ガイドラインの示された「自立循環型住宅」のマニュアルにも、沢山のラベリング項目が取り上げられています。しかし、「DESIGN WITH CLIMATE」の副題に [ BIOCLIMATIC  APPROACH  TO ARCHITECTURAL  REGIONALISM ]「建築的地域主義への生物気候学アプローチ」とあるように、パッシブの手法は地域の気候要素の分析を抜きには語れない「分析的アプローチ」を必要とするものです。

今回はその分析的アプローチのひとつとして「地域の気候分析」をとりあげます。太陽熱や季節風などその土地で得ることができる自然エネルギーを建築に有効に利用するためには、先ずその土地のポテンシャルを把握する必要があります。

Fig.3.1 パッシブパッシブ地域区分図

(Fig.3.1)は、自立循環型住宅への設計ガイドラインに示されたパッシブ地域区分図で(PSP)区分図と呼ばれるものです。
PSP(Passive Solar Potential)とは、1月の暖房度日(日平均外気温が18℃を下回る日について、室温18℃と当該平均外気温の差を合計した値をいう)に対する1月の平均日射量の比をいい、地域における日射利用の可能性を示しています。これにより、全国は「い地域」から「ほ地域」の5つの地域に区分されます。

「生気候図」を示したオルゲイがどのように地域ごとの気象のキャラクターを把握しようとしたか、オルゲイが残した様々なグラフから読み取ってお伝えいたします。

PART 1 CLIMATE APPROACH
ⅲ REGIONAL EVALUATION  p.24
Climate Evaluation by Region / Bioclimatic Needs by Region

第1部 気候からのアプローチ
第3章 地域評価  p.24
地域による気候評価 / 地域による生物気候学ニーズ

第3章は以下の文から始まります。

CLIMATIC EVALUATION BY REGION
The Bioclimatic Chart maps the problems and describes the counter measures for human comfort in varying climatic conditions. To apply this, to evaluate the climatic situation of a given locale, a detailed analysis covering the complete yearly cycle is necessary. Local weather data supplied by meteorological stations may give the architect information that will enable him to construct his own evaluation. In addition, excellent regional analyses focusing on the importance of climatology in residential design have been published in connection with the House Beautiful climate control project.

地域による気候評価
生物気候学のチャートは気候上の問題を写像します。気候条件を人間にとって快適なものにするために、対抗手段について説明しています。与えられた現場の気候の状況を評価するためには、完全な年1回のサイクルの詳細解析が必要です。測候所によって供給されたローカルの気象データは、彼が彼自身の評価を構築することを可能にする建築家情報を与えるかもしれません。さらに、住宅の設計にとってとても大切な優れた地域分析が、ハウスビューティフル環境制御プロジェクトに関連して公表されました。

オルゲイは、アメリカの4つの都市をとりあげてその気候特性を比較しています。

・COOL REGION  (寒冷地)MINNEAPOLIS,MINN (ミネアポリス)
・TEMPERATE REGION (温帯地域)NEW YORK AREA (ニューヨーク)
・HOT-ARID REGION  (乾燥熱帯地域)PHOENIX,ARIZ(フェニックス
・HOT-HUMID REGION(蒸暑地域)MIAMI,FLA(マイアミ)の4都市です。

オルゲイはこの4都市をモデルに、特徴的な気候でのパッシブシステムを模索しました。

Fig.3.3 オルゲイが分析したアメリカの4都市配置図

オルゲイは様々方法で、地域の気候を分析しています。先ずニューヨークの気温(乾球温度・湿球温度)・湿度・日射量・風向風速・降水量の五つのアイテムについてグラフにして分析しています。

Fig.3.4 ニューヨークの気象(年変化)温度発生頻度
Fig.3.5 生気候図にプロットされたニューヨークの10日平均気温

(Fig.3.4)は 月ごとに一時間毎の気温の発生頻度を視覚化したものです。(Fig.3.5)は 10日毎の平均気温を、快適範囲を示した生気候図に落としたものです。ニューヨークの気候が一年のほとんどの期間、快適範囲から外れているものの日射による輻射が得られれば、全体にマップ上で上部に移動することができて快適範囲に入る条件も含まれていることが読み取れます。

 オルゲイは4つの気候に特色のある地域の違いをビジュアルに表現することを試みて、独自のパッシブ気候図とも言える分析方法を試みました。

Fig.3.6 ニューヨークの気候評価

(Fig.3.6)は、4都市の気象を比較するためにオルゲイがたどり着いたパッシブ気候図です。左側に無風状態の快適範囲を示した「生気候図」に月ごとの日平均気温の推移を連続線で表現したものです。右は、横軸に日(1月~12月)縦軸に時間(0時~24時)をとってそこに時間毎の気温をプロットしてコンターマップにしたものです。コンターマップには、無風状態の快適範囲内を薄墨で示し、濃い色で快適範囲を超えて高い温度になる範囲を示しています。

このように地域毎に異なる気候をビジュアルに把握して、どの時期にどのようなパッシブ手法が有効であるかマップから理解する方法は日本でも試みられました。1980年から1982年の3ヵ年にわたって、建設省の依頼によって設置された「省エネルギーパッシブシステム開発委員会」(委員長:清家清 東京芸術大学教授)パッシブシステム検討委員会(委員長:奥村昭雄東京芸術大学教授)の検討結果の報告書である「パッシブシステム住宅の設計」(ISBN4-621-03039-6 C3052)(丸善株式会社)の付録に日本の23都市の「パッシブ気候特性図」がまとめられています。

日本の「パッシブ気候特性図」から「東京」の例を示しました。①気温 ②湿度 ③風向・風速 ④水平面全天日射量 ⑤南鉛直面日射量 ⑥雲量 で構成されており、気候が快適範囲内に無い期間のパッシブヒーティングやパッシブクーリングのポテンシャルの高さが一目でわかります。

「パッシブシステム住宅の設計」の設計から付録に収録された23都市の「パッシブ気候特性図」から 5都市(札幌・仙台・東京・大阪・福岡)の気温を引用しました。オルゲイの気候分析と同じように、快適範囲を超える部分と、秋から冬を経て春にかけての気温が低く、快適範囲に達していない期間(暖房必要期間)をビジュアルに比較することができます。

DESIGN WITH CLIMATE 03/12 「土地が持つ自然エネルギーのポテンシャル」以上

タイトルとURLをコピーしました