DESIGN WITH CLIMATE 06/12

PLEA Design

06/12 降り注ぐ太陽の方向

植物も人間の住居も、太陽の方向との関係でデザインされてきました。

Fig.6.1  Solar orientation in plant life
Fig.6.2 松(独立樹)の芽吹きの序列

Fig.6.1 は、その名の通り「屈光性」で知られるひまわり、Fig.6.2 は、空き地に独立樹として成長している樹齢15年の松の木の芽吹きの連鎖の様子です。3日の間に南南西に向けて最初に発芽することの優位性は、日射強度が最も強くなる正午の太陽の「熱軸」の影響を明確に表しています。

太陽の束縛
古代人の生活は、太陽の昇る方角や、その1年のサイクルと切り離せない県警がありました。また、恵み深い太陽の光はあがめられ、太陽の昇る位置に向けて重要な建物を配置するなど、たくさんの種族が儀式の場面で太陽を尊重していました。

古代エジプトでは、長い間太陽の動きを研究して、多くの寺院や墓が正確に冬至や夏至など特定時期の太陽の不幸に合わせていることが判明しています。直接的な太陽熱利用を考慮した場合、北半球では主要開口部を南面(南に向けること)させるのが有利だと直感的に判断できます。

実際に北緯40度では、冬季には南面の日射量合計が、東西面の3倍近くになり、夏季には南北面の日射量合計は東西面の日射量合計の半分にしかなりません。緯度が低くなるほどこの差はより明確になります。太陽の光や熱にいかに適応するか、おそらく古代人はある種の植物の講堂には早くから着目していたでしょう。ひまわりやマリーゴールドで知られるように多くの植物は、光の刺激に愛し、一定方向に屈曲して生長する「屈光性」(向日性)を持っていました。

最近の理論(オルゲイが執筆していた1960年代)
日射量を測定するための技術開発と実測データの蓄積で、建物の理想的な方位は計算で得ることが可能になりました。これらの測定は多くの太陽方位理論の根拠になっています。Augustin Rey.j.Pidoux と C.Bardet は建物は一方向の検討の基礎理論として「heliothermic」値を考案しました。「heliothermic」値は、その時間の日射量と温度から計算されています。様々な方位について年次気象データを使って計算した結果、l北から19°東に振った軸が最も理想的だと判明しました。

Fig.6.3 理想的な建物の方位を分析するためにダイヤグラム

本文では、Augustin Reyら3氏の理論のほか、当時の最先端の6つの理論に触れ、そのどれもが太陽熱利用のための建物の最適方位として「真南および東西に30°前後」の範囲に理論づけていることを紹介していますが、オルゲイ自身はこれらの理論を少し物足りないものとして受け止めていました。オルゲイは理想的な建物の方位を分析するためにダイヤグラム(Fig.6.3) を描き、それぞれの配置ごとに気温と日射の関係を分析しています。

建物の理想的な灰地の方向を検討する「Sol-Air」方式では、まず人間の体内で熱の感覚を生成するのに作用する「気温」と「日射量」を分析します。このように、完全に太陽の光を利用するためには、体感温度を「快適ゾーン」付近に維持するために日露小名「気温」や太陽からの放射としての「日射量」など、測定されたすべてのデータをあわせて考慮する必要があります。

オルゲイは、1年のうち最も寒い時期を12月7日~3月7日の3か月間、最も暖かい時期を6月7日~9月7日の3か月間として、以下のデータをグラフにして比較分析しました。
①直達日射の平均値
②散乱日射の平均値
③年間平均値の典型である3月21日の時間ごとの気温変化と日射取得を「生気候図」の快適範囲に照らしたオーバーヒートとアンダーヒート

オルゲイは日射量と外気温の影響を組み合わせた自身の「Sol-Air」方式で、先に説明した「heliothermic」値とは違う手法を試みました。それは、年間の各方位の壁面で得られる日射量を、暖房を必要とする「アンダーヒート」期間と、熱取得が過剰になりむしろ避けるべき「オーバーヒート」期間に分けて分析することでした。

Fig.6.4 方位別取得日射量比較
Fig.6.51  ニューヨーク市(ニューヨーク州)「アンダーヒート」「オーバーヒート」
fig.6.52 フェニックス市(アリゾナ州)「アンダーヒート」「オーバーヒート」

fig.6.51 は、上がニューヨーク市(ニューヨーク州)、fig.6.52 がフェニックス市(アリゾナ州)の気象データを分析したものです。左は、暖房を必要とする「アンダーヒート」期間の方位別日射量、隣は「オーバーヒート」期間の日射量を示しています。一番右側に、夏に日射取得で暑くなることなく、冬に最大の日射取得を実現する理想的な建物の方位が示されています。ニューヨーク市では17.5°、フェニックス市では25°、それぞれ主要開口部を南から東に振って配置するのが最善策だとわかります。

さて、ここで日本ではどの方位に主要開口部を向けるべきか考えてみます。日本の夏は暑く湿度の高いアジアモンスーン気候に属し、午前中の東からの日射取得はそのまま冷房負荷になります。建物の東面には主要開口部を設けることなく徹底的な日射遮蔽と断熱によって室内への日射の侵入を少しでも少なくすることが建物配置として重要といえます。また冬について、昼間に十分な日射熱を蓄熱して夜間に備えるのであれば、午後一杯日射取得の可能な西向きが有利といえます。

パッシブシステムでは、日射・気温・地熱・通風といった自然環境が持つエネルギーをできる限りそのまま住宅に取り込んで利用する設計手法です。しかし、地域によって気候は異なり、そこで調達することのできる自然エネルギーの配分も違ってきます。

建物の計画にあたって、求めるべき快適を得るためにどの時期にどれくらいの熱需要があり、それに対して自然エネルギーでどれだけを賄うことができるかを定量的に把握することがパッシブシステムの基本です。太陽熱利用では、単に効率ばかりを検討していると、いたずらに「オーバーヒート」を招くことになります。どの時期にどれくらい必要なのかを把握してそれを得ることをデザインすることがパッシブシステムの面白くて奥深い部分です。

DESIGN WITH CLIMATE 06/12 「降り注ぐ太陽の方向」 以上

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