「敷地内の木で建物をつくる」
プロポーザルでの提案の中で最も高く評価されたことは、「敷地内の木で建物をつくる」ということでした。京都府が手に入れた広大な里山には、普請のために育成されていた、ひのき林がありました。OM研究所は、プロポーザルで「こうあるべきだ」という主張をしていただけで、マジでそれをやることにはならないと思っていました。
山に生えている木は、ダイコンと同じグリーン材です。それを建築にするためには、伐採・製材・乾燥と時間を掛けなければなりません。この理想的なフローは、年度予算で運営される官庁の単年度事業で叶うものではありません。「敷地内の木で建物をつくる」ことのエコは簡単に説明できますが、それを実行するためのフローも合わせて説明しました。
木は何時伐採してもいいというものではありません。「切り旬」というものがあって、理想的には、12月の新月伐採が好ましいと思っています。樹木も夜は眠り、寒い冬には冬眠もします。冬眠に向けて樹木は水分をでんぷん質を落として、美味しくない状態になります。この美味しくない木は、虫は好んで食しません。
さらにその後、伐倒したまま、枝葉をつけたまま「葉枯らし」乾燥をします。このときの木材の含水率は 130% くらいで、そのようなモノを移動するのはとても重たく無駄なエネルギーをかけることになります。そのまま冬を越して、重さが半分くらいになってから、枝葉を落としで「玉切」します。
そのような「めんどうなこと」になることを説明すれば、残念ですが実現できなくなると思っていましたが、裏目に出ました。京都府は大いに喜び、また大きな期待を持って、われわれを第一席にします。実施設計は翌年度に設定され、あわせて京都府はこのプロジェクトの実現に向けて予算調整を始めました。
プロポに勝って、敷地内の木を調べて設計することになりました。「胸高直径」(地面から1.2m・北海道では 1.3m)と言いますが、「輪尺」というバカでかいノギスで、ちょうど胸の高さの直径を測ります。そうすると、大体の高さと材積が解るのでそれをもとに設計することになります。
製材設計
もともと日本には「木割り」というものがあって、それに基づいて、丸太を余すところなく使うような決まった製材手法があります。しかし、木を全部使うためには、廻り縁・幅木・雑巾摺・あかり障子などの細い材料を使う設計が不可欠ですが、伝統構法ではないデザインには、廻り縁も幅木も雑巾摺もありません。
とても歩留まりの悪い計画になりそうでしたが、天井を板張りで計画したのでさほど無駄にはならなかったと思います。下の模型で京都府長にプレゼンしました。