関西学研都市展示館では、施主の要望でプレカット工法で施工しました。チーフの永田昌民さんはプレカットをとても懐疑的に見ていました。心配だった僕たちは、何度もプレカット工場を訪ねました。僕がそれまでに抱いていたプレカットのイメージは、木材をプラスティックのように扱い、一本一本木配りをすることなく、基も末も、表も裏も、見えなくなる柱も表しの柱も一切考慮しないで機械で仕口をつくる…というようなものでした。
実際に現場で見たものは、失礼で拙いイメージと大きくかけ離れた姿でした。工場には沢山棟梁が居て、それそこ木材の達人たちが、鑿や鋸を使うように大きな機械を道具として自在に操りながら、安全に早く精度の高い加工を行っていました。プレカット工場は巨大なブラックボックスではなく、大げさに大きい「大工の道具」だったことを知りました。もっとも、全てのプレカット工場が必ずしもこのようなものではないことはあとから知りました。
プレカット工場から、部材が揃ったので見てくれと言われ、確認に行くとすべての部材が揃ていて、化粧柱は全てきちんと養生されていました。1500㎡ の木造施設ですのでそれなりの量です。隣には、展示館の4倍以上の体積の木材が出荷待ちの状態でした。その膨大な量の木材が何かたずねると、ちょうど同じくらいの大きさの「寺」だと言われました。
同じ大きさの寺の木材で、展示館なら4つできます。建物を長持ちさせるのであれば、木材を太くするのが安心です。建物を丈夫につくり、長持ちさせるためには木材の石数(使用材積)を多くする必要があり、そのことは山もうれしいことに気が付きました。
森林率日本一の高知県「土佐」の地域住宅つくりをリードする「土佐派の家ネットワークス」というものがあります。県産材と土佐漆喰・土佐和紙という魅力的な地域素材で家を作っていますが、この土佐派の家の使用木材量は、坪あたり1石と言われ、一般の木造住宅の約1.5倍の材積を使用しています。